2025年5月アーカイブ

井桁基礎工法とは

 井桁基礎工法は、ウッドデッキや木道等の小型構造物の基礎として使える新しい工法です。
 木材を使用しているので、従来の鋼管杭やコンクリートを使用した基礎工法に比べ、安価で施工性に優れ、周囲の自然環境への影響が少ないという特長があります。基本的に無廃土で施工可能です。

 井桁基礎工法開発の発端は、とあるビオトープ空間の木道にコンクリート基礎を使用しなければならなかったことに始まります。当時、東日本大震災の頃でしたが、コンクリート基礎以外には、PC球状基礎や鋼管杭などしか選択肢がなく、なおかつ周囲の地盤を乱さず安価に施工できる方法は皆無でした。もっと簡単な方法で施工できる仕組みがないか考えていた中でのアイデアでした。

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新たにカタログを掲載しました。(2022.2.5)
最新カタログ

開発の経緯

農村公園における施工時の状況です。
天然記念物の野草が生息する場所ですが、既存の土壌は掘削によって大きくえぐられ、60cm角のコンクリートブロックが基礎に埋められています。
その上部工にグリーンハートの木道を設置させていただきましたが…

ビオトープの観点からいえば、できるだけ土工事を行わず、現在の生息環境を保持する施工方法が望ましいです。
生態系に一番負担が少ないからで、なおかつ天然記念物の野草が生息している状況を鑑みれば、6トン~7トンもある重機が表土を荒らしているのはいかがでしょうか。
この時、何でもかんでもローコストというだけでコンクリート基礎に決められてしまうことに疑問を感じました。
小径鋼管杭で行うこともできたはずですが、やはり金額が折り合いませんでした。

そこでいろいろ熟慮した中で生まれたのが、安価にできる井桁基礎工法です。
従来の木杭に部材を足すことで支持力が得られることがわかりました。
ただし、建築物や土木コンクリート構造物など重量が大きい構造物に使用することはできません。
木道やウッドデッキ、ベンチなどの軽量造物に適しています。
例えば、写真の場所であれば人力で施工できましたし、機械を入れても3トン程度の重機で済みました。

湿地帯や池など水深が浅い部分に構造物をご検討であれば、きっと安価にご提案できます!
しかも腐食に対して15年保証がついていますので、発注者の方にも安心していただけると思います。

幅員1.2mの木道に60cm角のコンクリート基礎が2つ。
過剰設計に思えるかもしれませんが、、地盤調査の結果を考慮した地耐力から計算するとこの大きさが必要です。
50cm角では足りませんでした。
この時、井桁基礎工法が使えていれば、掘削する必要もなく、残土さえ発生しませんでした。
土工事がないということは表土がそのままなので、生態環境への影響は最小限に抑えられたはずです。

施工から約半年。
水底には植物が戻っておりません。
一方水辺には外来種が確認できます。

井桁基礎工法の特徴

この工法は、基本的に土工事がありません。そして構造が単純ですので比較的安価です。例えば地盤のN値2程度の粘性土質地盤では、井桁基礎1か所当たりで10kN/m2くらいの支持力が得られます。実際に載荷試験を実施し確認しました。
木材ですので、耐久性を心配される方もいらっしゃると思います。井桁基礎工法には、グリーンハートやケブラッチョコロラドといった特に水に強い木材を使用します。腐食に対しては15年保証です。しかし、15年経過したらそれで腐食し始めるわけではありません。日本国内でも20年以上経過している施工実績が増えてきています。

他工法との比較

井桁基礎工法の構造

井桁基礎工法は、上の写真のように打ち込んだ木杭に横木を取り付けたもので、杭本体の支持力に加え、横木の底面にかかる抵抗力(地反力)で上部構造物を支える構造になっています。
非常に簡単は構造で、土工事や養生期間が不要です。

樹種は、ケブラッチョコロラドという南アメリカ産材です。
地面に接する場所に使用しても腐食することなく長く使える材料です。
もちろん防腐処理などは一切施しておらず無垢の木材です。
国産材ではせいぜい10年しか持ちませんが、その2倍から3倍以上の期間、大きな手を加えることなく供用できます。
ウッドデッキや木道、八つ橋などの小型構造物は井桁基礎工法でも十分に支持可能で、コンクリート基礎を含め従来工法を用いるよりもトータルでコストを抑えられます。

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支柱杭は長さ3mで、土中に2.8mくらい圧入しています。施工場所の地盤強度や上部構造物により支柱杭の長さが変わります。(1mから3m)
支柱杭だけでも下がることはありませんが、横木を取り付けることで支持力の増加が図れます。
支柱杭と横木はステンレスボルトで接続しています。

上部構造物と地盤強度が分かる資料をいただければ、井桁基礎工法で検討書を作成いたします。
詳しくはお問い合わせください。

横木の上部に土台、大引き、根太が載った状況です。
木材同士なので、接合は自由自在です。

載荷試験

井桁基礎工法1か所当たりの長期許容支持力は、粘性地盤、N値2~3程度の条件で10~15kN/か所が得られています。
木道やデッキにおいて載荷重を3.5kN/m2をした場合、井桁基礎工法1か所で2~3m2程度の面積を負担することができます。

井桁基礎工法の施工方法

2025-5-18 支柱杭が長い場合は、特殊鋼管オーガーやブレーカーを使用して支柱杭を埋設します。支柱が短い場合は、重機等を使用せずに施工が可能です。

1 オーガー掘削・杭打ち

特殊オーガーで先行掘削し、ブレーカーで杭を押し込みます。堅い地盤など、状況に応じ少しの打撃を加えて杭を打ち込みます。
打撃を加えても、ハードウッドなので杭頭の破損は最小限です。

2 横木取り付け

打ち込んだ支柱杭の両脇に横木を取り付けます。支柱杭と横木が外れないようステンレスボルトを使用します。

3 養生

打ち込んだ杭が地盤になじむまで養生期間を設ければなお良いです。
しかし、小型構造物は軽量なので、翌日上部構造物を施工しても沈下した事例はありません。

4 上部構造物設置

井桁基礎に構造物(写真はウッドデッキの大引と根太)を取り付けます。

5 完成

6 完成から6か月後の状況

周囲の植生が復活しています。土工事がゼロであったため、地面を掘り返すことなく施工できたことが大きな要因と言えます。
ウッドデッキの沈下は見られず、井桁基礎の有効性が確認できます。

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